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Artist Statement

大野は、インスタレーション、写真、映像を用いて、自然環境や社会、生命の「移ろい(時間とともに変化する様子)」を主題に作品制作を行う、ニューヨーク在住のアーティストである。国際メディアの報道カメラマン・プロデューサーとして、21世紀初頭の急速に発展するアジアを取材してきた大野は、報道されるストーリーやイメージの短い寿命に加え、報道に乗らない物語が数多く存在することに気づいた。現在は、こうした自身のジャーナリストとしての体験をもとに作品を制作している。

地球という惑星の環境を出発点として物事を理解しようとする「ジオポエティクス(Geopoetics)」の姿勢は、大野の表現において中心的な方法論となっている。これは、政治的・社会的な問題を軽視するものではなく、むしろそれらを地球規模の視点から見直すための手段だと彼は考えている。「同じ星に暮らす人類が、自分たちの姿を遠くから見たとき、そこには必ず共通の経験と理解がある」と彼は語る。

2020年に国際宇宙ステーションへ往復輸送されたプロジェクトをはじめ、大野の作品には、変化することの必然性と可能性の両方が含まれている。「生命を含め、物事が変化するという現象は、時間と空間が存在する限り、唯一の絶対だと思う。それは永遠の姿そのものでもある。だからこそ、時間を切り取るのではなく、時間の中で生きて変化する作品をつくりたいといつも思っている」と彼は言う。また、移ろう姿や、終わりのない状態そのものが、生命やあらゆる人・物・出来事にとって最も詩的なあり方だと語る。

「アーティストの役割は、詩的な表現を通して、どのような形であれ、伝えたいことに輪郭を与える努力をすることだと思う。同時に、表現するという行為には責任が伴うということを忘れてはならない。わたしたちは、世界の現状を注意深く見つめ、常に小さな変化にも敏感であるべきだと思っている。そこには、不確実性や不条理、残酷な現実が数多くある。だからこそ、わたしたちは、自分たちの見解、考え、感情や温もりを誠実に、ありのままの感性とともに、より正しい正義のために、ときには優しさのために、表現し、心の橋渡しをしなければならない」と大野は語る。

le dimanche 26 janvier 2020 à Paris. A photo documentation from Nothing, Something, Everything, 2020

le dimanche 26 janvier 2020 à Paris. A photo documentation from Nothing, Something, Everything, 2020