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Artist Statement

大野は世の中の記憶と時間を、インスタレーション、写真と映像を使用し、彼の作品の中へと織り込んでいく。生きるということ、死ぬということ、そして愛するということ、目には見えない境界線、そして世界がいま忘れようとしている歴史テーマなどに取り組む現代芸術作家だ。国際メディアの報道カメラマン・プロデューサーとして約10年間、21世紀初頭の急速なアジアの発展を撮影してきた大野は、報道されるストーリーやイメージの短かい存在期間だけではなく、メディアが伝えないストーリーが多いことに気づく。大野は今、この彼自身のジャーナリストとしての体験から作品を創作している。

彼の作品は、存在と欠如の相互作用から考えられている。 「わたしにとって作品の材料は『時間』と『記憶』であり、物質的存在のない『概念』や『意識』といったものである。わたしは、生というもの、それと社会との複雑な関係を認識する手段としてのアートに興味がある。時間と時間のさまざまな側面に興味がある。だから時間の中を生きて、時間をかけて変化するように作品を考える。したがって、作品の中には『時間の流れ』というものが発生することになる。すべての物質的存在は消え行くものだとしても、本質というものは半永久的に残る。ここでわたしが言う本質とは、わたし達のアイデアや思考、そして想像力といった皆無形のもの。わたしのアーティストとしての役割は、詩的な表現を使い、少しでも永続的な『響』を生みだすこと、そして無形のものに輪郭を与える努力・工夫をすることだと思う。 」

この世代は政治哲学による絶対的な説明と支配を拒絶し、男と女のカラダと自由を求める姿勢を再確認することを希望する。この世代は世界的な幸福と満足の実現が可能であると信じてはいない。けれど、人の悲しみを減らすことはできると信じて止まない。世界は本質的に不幸せだから、わたし達はいくらかの喜びを作り出す必要がある。世界は不公正だから、正義のために働く必要がある。そして、世界は不条理だから、わたし達はそこに意味を提供しなければならない。アルベール・カミュ(フランス人小説家・哲学者 1946年)

「世界の現状は、46年にカミュが戦後間もないフランスを見て感じた世界と大差はないように思う。わたしの世代が、この世界についてどう感じているかもまた、彼の世代と何も相違無いのではないかと思う。アーティストは世界の現状を注意深く見つめ、小さな変化にも常に敏感でならなければならないと思っている。そこには不確実性、不条理なことや残酷なことがが常に存在している。わたし達は、わたし達の見解、アイデア、気持や温もりというものを、誠実に、高度な感性とともに、より正しい正義のために、ひとに優しく寄り添うために表現して行く努力をしなければならない」と大野は言う。